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絵描きからの片道書簡 初通「まえがき」

2014.11.21

阿部 海太

阿部海太 / 絵描き、絵本描き。 1986年生まれ。 本のインディペンデント・レーベル「Kite」所属。 SUNNY BOY BOOKSにて絵本「みち」を販売中。 本の書き出しだけを読み、そこから見える景色を描く「フロム・ファースト・センテンス」を連載中。 kaita-abe.com / kitebooks.info

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絵を描いています。
本を読み、音楽を聴き、仕事に行き、散歩し、寝坊し、
そしてまた絵を描いています。
 
 
阿部海太といいます。かいたと読みます。
SUNNY BOYさんとは先月初めてお会いしたばかりです。
悔しくて悲しいことがあったあの火曜日、初めて降りた学芸大。
散々迷った末にお隣り祐天寺までやってきて、
交番のお巡りさんに教えてもらってやっとのことで見つけた小さなお店。

「僕は絵本を描いています。見ていただけませんか?
 それでもしよかったら、お店に置いていただけませんか?」

この3つの文句を言うのにずいぶん時間がかかりました。
ためらいを悟られないように必死に本棚から顔を離さず、睨むように背表紙の文字を追いました。
最初は店主と他のお客さんの会話に聞き耳を立てつつ話しかける隙を見計らっていたのですが、気付けば木々の間に迷い込むように、お店中の本棚を何度も何度も往復していました。探し当てたいくつかの本の中から購入する本を選ぶ頃には、窓の外は黄昏て、店内には僕と店主がいるだけでした。

「置いてみないとわかりませんが、うちでよかったら。」

きっと同い年くらいだろうな。
顔の印象だけでなく、お店のたたずまいから同じ時代を生きて来た人の感性が見てとれるような気がしました。
柔らかな物腰と、とつとつと喋る無駄のない、どこか少しだけひんやりした言葉。そのギャップにどきどきしながら、後日再訪する約束をし、お礼を述べてお店をあとにしました。

生まれてこのかた28年間、いつだって人見知りですから、初めて会う人とは上手に話ができません。
それでも僕が描いた絵本「みち」は、SUNNY BOYさんのお店で見知らぬ人に話しかけたり、お家まで連れて帰ってもらったりしているようです。僕が相も変わらず下町のアパートで生活していても、僕の心のかけらは知らないうちにホウボウに散ってゆく。その姿を思い描くと、ちょっと欠けたせいでしょうか、心がほんの少しだけ軽くなるみたいです。
 
 
来年2月にはSUNNY BOYさんのお店で絵本の原画を飾らせて頂けることになっています。
その展示に向けて、何か紹介になるようなコラムを書かせてもらえるとのことで、まずはまえがきとして僕が初めてお店に来た日のことを書きました。今後は数回にわたって、僕が絵を描くときに考えていること、過去に影響を受けたものごとについて書いていきます。
人見知りは自分ばかりとお喋りするので、わりと自分語りは得意なつもりですが、自分の描く絵に限っては言葉にしにくいことが大変多く、人に伝えるのにいつも四苦八苦しております。
良い機会なのでこの場を借りて、見知らぬあなた様に向けて、僕がSUNNY BOY BOOKSに来る前のことや、僕の描く絵についてゆっくりとお話しさせてもらおうと思います。
話したいことはけっこうたくさんあるんです。上手くいくかはわかりません。
ただ、大事な友に宛てる手紙のように、丁寧に書くことを心がけることはお約束します。

海太   
 
 

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*阿部海太『みち』(Kite)2.800円+税
 

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