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ヘテロトピア通信 第1回

2014.10.15

ヘテロトピア 通信

2014年からはじまった「鉄犬ヘテロトピア文学賞」の情報発信ページ。選考委員ら(井鯉こま、石田千、小野正嗣、温又柔、木村友祐、姜信子、下道基行、管啓次郎、高山明、田中庸介、中村和恵、林立騎、山内明美、横山悠太)によるコラム “ヘテロトピア通信” も更新中。 (題字/鉄犬イラスト:木村勝一)


鉄犬ヘテロトピア文学賞についてはこちら

〈「鉄犬ヘテロトピア文学賞」贈賞パーティー〉レポート
Text by Yusuke Kimura

 

2014年8月2日、神保町の漢陽楼にて、「鉄犬ヘテロトピア文学賞」の贈賞パーティーが開催されました。
若かりし周恩来が通ったというこちらの漢陽楼、昨年、高山さん演出で上演された演劇「東京ヘテロトピア」の会場のひとつとなったお店です。ここで、携帯ラジオのイヤホンから、管さんが書いたテキストの朗読が流れました。思い出深い場所です。

この日は、選考委員の小野さん、林さんはどうしても都合が合わず、やむなく欠席となりました。会場に一足先に着いたほかの選考委員は、ドキドキしながら受賞者のお二人を待ちます。受賞者である下道さんと中村さんにはじめて会う委員もいましたので、楽しみのドキドキと緊張のドキドキの両方あったのでした。

二階の個室の扉を開けて、下道さんがにこやかに登場しました。お互いの自己紹介がはじまり、笑い声が響きます。いきなりのなごやかムード。そこへ中村さんも加わり、いっそうにぎやかになりました。着席する前からパーティーがはじまったかのようです。

BRI_9502 ひとりひとり、自己紹介とともに、受賞作と賞への思いを語りました。それぞれがこの賞と受賞作に思い入れがあるため、たっぷり時間がかかります。正賞である鉄犬燭台の贈呈は、そのあとなのでした。

そしていよいよ、鉄犬燭台の贈呈となりました! 燭台を入れた木製ケースの迫力ある素材感に、驚きの声が上がります。そのケースから金色にきらめく燭台(別名・鉄犬トロフィー)が取り出されると、室内はさらに大きな歓声に包まれました。
下道さん中村さんの喜ぶ様子に、制作した八戸在住の造形作家・木村勝一さんもうれしそうです。この日のためにわざわざ上京してくださいました。
(温又柔注:そして、この勝一さんは、木村友祐さんの実のお兄さんなのです。そうです。木村兄弟がいなければ、鉄犬ヘテロトピア文学賞は成り立たないのです!)

興奮の余韻が残るなかで、お二人に受賞の言葉をいただきました。下道さんは「ぼくの活動をちゃんと見てくれている人がいることに、感動と感謝の気持ちでいっぱいになりました」と語りました。「自らも誰かを励ませる機会を、より多く作ってみようと思います」との言葉に、「連帯」をめざすこの賞から、新たなつながりが生まれる予感……!
中村さんは、「ふたつシークレットの話を」と、もはや慈善事業のように儲からない出版について、また、完璧をめざすあまり本が書けなかった自分がなぜ書けるようになったかなど、とても興味深いお話をされました(シークレットなのでくわしく書けないのが残念!)。著作のユーモラスな筆致そのままの話術で大いにみんなを笑わせ、「とにかくみなさんありがとうございました」。拍手鳴りやまず!

パーティーは最後まで、懐かしい友人と再会したかのような温かなムードに包まれていました。集まったみんなは、つねに野の風に吹かれている精神的野良犬と言っていい人たち。散会となってまたそれぞれの場所へ帰っていっても、おそらく、吹いてくる風のなかに、お互いの存在を感じるのです。

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木村 友祐 (きむら・ゆうすけ)
1970年、青森県八戸市生まれ。
日本大学芸術学部文芸学科卒業。
2009年『海猫ツリーハウス』(集英社)で第33回すばる文学賞受賞。
最新作『聖地Cs』(新潮社)。

 

写真/尾島 敦

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