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ヘテロトピア通信 第6回

2015.12.16

ヘテロトピア 通信

2014年からはじまった「鉄犬ヘテロトピア文学賞」の情報発信ページ。選考委員ら(井鯉こま、石田千、小野正嗣、温又柔、木村友祐、姜信子、下道基行、管啓次郎、高山明、田中庸介、中村和恵、林立騎、山内明美、横山悠太)によるコラム “ヘテロトピア通信” も更新中。 (題字/鉄犬イラスト:木村勝一)


鉄犬ヘテロトピア文学賞についてはこちら
下道01

<無題>Text by 下道 基行

 

与論島1日目。2015年9月18日朝5:30。
部屋の戸をノックされて目覚める。
「津波が来るから、6:30に高台に避難します!」
寝ぼけ眼に民宿のおかみさんの慌てた声。外はまだ暗い。夜洗ったシャツは乾いていない。

6:20。スリッパをぺたぺた言わせてロビーに向かう。キッチンでは民宿の家族やスタッフ総出で大きなおにぎりを握っている。傍らのテレビではニュース番組がつけっぱなしになっている。南米チリで大きな地震があったという。津波の到達予定時刻は7:30となっている。
「ごめんね。びっくりして早くおこし過ぎちゃったね。」

僕ともうひとりの宿泊者そして宿の家族とスタッフ、全部で7人、宿の名前のプリントされた小型のバスに乗り込む。その頃には、外はすっかり明るくなっている。
高台につく。島で一番高い場所だと言う小さな公園には、おばあちゃんと小さな孫娘らしい子がふわふわと風船を片手にぼんやりとしている。
駆け上がると、周囲340度くらいがすべて水平線で、本当に地球が丸くてその上に立っているように感じた。
おかみさんは一畳くらいの大きさの公園のベンチに、作ってきたおにぎりや沢庵を広げ始める。ベンチをちゃぶ台のようにして朝飯を食べる。チリのある東の方の海を意識しながらも、それぞれ自分の自己紹介や色々な話をする。おかみさんは、宝石や大切な物たち、長期戦に備えて本まで持って来ていた。
僕らは、地球の裏側からやってくるかもしれない波を待ちながら、時間を過ごした。

7:30。ひとりが「島を囲むリーフにいつも出来る白波が消えていない?」と話す。
みんなで遠くの海を眺める。そして、少しして、また普段の海に戻った。

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下道 基行(したみち・もとゆき)
2001年武蔵野美術大学造形学部油絵科卒業。日本各地に残る戦争遺構を調査撮影したシリーズ『戦争のかたち』(2001-2005)、自らの祖父の遺した絵画を追って旅したシリーズ『日曜画家』(2006-2010)や、日本の国境線の外側を旅し日本植民地時代の遺構の現状を調査するシリーズ『torii』(2006-2012)など。旅やフィールドワークをベースにした制作活動を続けている。
http://m-shitamichi.com/

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