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阿部龍一|描きたい絵

2019.08.20

阿部龍一

阿部 龍一/ Ryuichi abe 1987年、東京生まれ。 旅と人と住まい、そんな絵を描いています。 「サニーな散歩道-学芸大学と祐天寺よりみちマップー」のマップイラストを担当。制作と展示と生活に向けて気ままに更新いたします。

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 この数年いろんな場所で絵の展示をしていく中で、制作の途中にいつも間に合わない絵があった気がします。それは僕の身近なところの風景を描きたい事でした。今回の展覧会を「旅のはじめ」としたのはそんな理由がありました。

 展覧会の始まる一週間前に鳥取に居ました。
 宿泊先の町で毎年開かれる花火を見るためです。数年前からお世話になっているゲストハウスでたこ焼きを焼いたり、久しぶりに訪れた喫茶店で初めての挨拶をしたりと、楽しく過ごしたけれど展覧会前だから気持ちだけ忙しなかったです。

 東京に戻ってから展示の設営まであと数日のところ、ひねりだすように絵を描きました。 近所でみるアジサイ、部屋の中に佇む静物、部屋の絵など…日中は暑くて気が散るから、夕方に自転車を走らせ公園に向かいました。近所の公園は広いので机のある原っぱで紙と絵の具を広げました。
 透明水彩は塗るときは濃いけど乾くと思ったより色が薄いので、水を含めた筆で乾いた絵の具をたっぷり溶かします。取り敢えず目の前にひろがる公園の風景を、夕方はランニングや散歩をする人たちが周回しています。イチョウの木もまだみどりです。ひととおり愉しんで二時間くらい経ってから帰りました。

 次の日も同じような流れで公園の机に向かいました。昨日僕が居た机には誰かが話していたので、一つあけた隣の机に座りました。今日は写真を持ってきていてそれを見ながらよさそうなのを選んで描きました。暫くすると後ろの机に犬を散歩している人が何組か来て、犬友達同士で賑わっていました。
 描いて乾いた上から同じ色を乗せるとそこに深みが増します。まだ乾ききっていないところに別の絵の具を乗せると滲んで複雑な色味が現れます。太い筆で形をなぞるように描いて、その上から細い筆で陰影をつけるように描いたり。見たものを描こうとするとそれを正確に描こうとして、描き進めていくと思った色みが出せず気持ちがつまらなくなるので、写真はそこに写ったものをそのまま描かなくても選んで描けるから気持ちが楽です。想像で描くとまた違う感覚で描いていると思います。
 犬を散歩する人たちが居なくなって、ひとつ隣の机にいる人たちの会話がやんで音楽の練習が始まりました。そのあいだに描きたい絵が描けたので帰りました。まだ暑さが酷くなくて夕涼みに丁度よい時季でした。

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