ボクサーの動物日記 4回目「マレーシア、旅。前半。」
2015.07.13
ダンサーとメッセンジャーという動物とは全く関係のない仕事をしながら動物への飽くる事なき探究心を持て余しているボクサーの動物日記。SBBにて「ボクサーのニッチな裏生物学講座」を不定期で開催中。
梅雨が本格的に始まる少し前、僕は何かから逃げる為にその国へ旅に出た。
マレーシア。
何とは無しに出かけたその国は自然を守り誇りを持つ素晴らしい人々と闇にうごめく奇怪な生き物たち、大空を羽ばたく爽快な鳥にあふれていた。
日本はまだ過ごしやすい穏やかな気候の中、成田から一人期待に胸を膨らませ飛行機に乗り込んだ。
最初の地は首都クアラルンプール。
旅立つ前友人からクアラルンプールは都会で見るところがないと期待を削がれるようなことを言われていたので、最初の出発地点としての認識以上のものは何もなかった。
ただ現地につき調べたところ何箇所か興味をそそられる場所がある。
それは動物園であったり、水族館であったり、野鳥園であったりするのだが。
今回の旅の目的は逃避、それしかなかったので現地で何をするかは全くのノープランだ。
とりあえず宿から近い水族館と野鳥園に行ってみることにした。
水族館はいわゆる都会の中の小さな水族館。
イメージとしては池袋のサンシャイン水族館を思い出してもらえればいい。
近代的なビルの中にある都会人のオアシス。まさにそれだ。
僕が水族館や動物園に行く時、注目するところはいくつかあるが展示している動物というよりかはその動物園の特色。
もしくは醸し出される個性を感じたいという思いが強い。
その中で今回の水族館の内部は特に真新しいものはなく、強いて言うならば巨大なヌートリアがいたことくらいだ。
今や京都の街中でも逃げたヌートリアが観れるのでそんなにお勧めはできるものではない。
もしくはピラニアの水槽に人間の骨のオブジェが置いてあったり、これ日本でやったらきっとクレーマーに非難轟々だなという展示もいくつかあった。
ちなみにピラニアというのはいくつかの種類がありおそらくみなさんがピラニアと聞いてイメージするピラニアはピラニアナッテリーという群れをなす比較的スタンダードなピラニアだ。
ピラニアといのはブラックピラニア、ダイヤモンドピラニアなど何種類もいるのだがそのどれもが美しく熱帯魚好きにもハマる人が多い。
餌をきちんとあげて大型の水槽で飼育すれば非常に飼いやすい個体だ。
ただ餌が少ないと共食いを始めてしまうのだご注意を。
さて少し話がそれてしまったがその展示方法は私たち都会人に強烈なアンチテーゼを投げかける。
とにかく海の生物に興味を持とう!
まもろう!
考えろ!考えろ!このままでいいのか?
お金を払った僕たちをまるで攻め立てるかのようにその水族館は疑問を投げかけてくる。
あなたが捨てたゴミはこうやって海の生物を殺します。
あなたは自分の生き方をどう鑑みますか?
まるで教会で罪を告白した罪人のように僕はその水族館を後にした。
そしてそこから昼を食べ電車で野鳥園に向かう。
どうやら世界最大の歩いて入れる飼鳥園があるらしいのだがとにかく駅から遠い。
20分はあるいてやっと入り口についた。
遠くからその巨大な檻は認識できていたのだが歩いても歩いても辿り着かないその檻はあたかも映画、ジュラシックパークに登場する檻のような存在感であった。
つまりそのくらい巨大なのだ。
中に入ってもとにかく広い。
暑い。
そして巨大なペリカンやハゲコウなどがそこら中にいる。
ペリカンといえば、かなり接近できたのだが、あのひと昔前モモイロペリカンのカッタくんが近所の幼稚園に降り立ち園児と楽しげに遊んでいた光景とは裏腹にかなり貪欲な生き物であるので近づきすぎるのはやめておいた。
彼らはあの袋に海水ごと魚をすくい上げ食すことで有名だがその対象は魚にとどまらない。
近くにいて空腹であれば鳩ですら丸呑みにしてしまうのだ。
まあ人間を食べたりはしないのだが近づきすぎてあの巨大なくちばしに突かれるのはできれば避けたいというのが本音だ。
ちなみに鳩を食べる様子はご存知you tubeでも確認できるので興味がある方はどうぞお調べください。
そしてモモイロペリカンとは繁殖期に赤みを帯びるのであって普段はただの白いペリカンなのであしからず。
しかしこの野鳥園、この後出てくる動物園もそうなのだがとにかくサイチョウ推しが甚だしい。
あの頭に冠があるサイチョウがとにかくこの国の誇りなのだ。
ちなみにあの冠の役割がなんなのかは全く分かっていない。
しかもその檻は周りが熱帯の植物に侵食され、まるでジャングルの中にたまたま檻があるかのような印象だ。
これが熱帯特有なのだろうがとにかく植物が日本とは違うのだ。
つまりリアリティがある。
もしくは自然を全く人間が制御できていない。
制御するのももう無理なので一緒に生きちゃいましょうよという雑多な、けれど強靭な精神を感じずにはいられなかった。
まあ動物が幸せならいいですよね。え、見えませんか?まあ動物は気まぐれですからねぇ〜という具合だ。
サイチョウにかんしてはまだ分かっていない生態が多いので説明文を読むと一つ面白い情報があった。
それはサイチョウが現地の人にとって戦いの神として崇められていたらしい。
これは僕にとって全くの初見なので色々と調べたのだがまだ細かな情報を調べられていないので引き続き調査をしたいと思う。
本来はここで動物園についても触れたかったのだがそれはまた次回に回すとしよう。
まだこの時点で旅の前半であるのだがもう僕はこの国のもつ独特な雰囲気にやられてしまっていたのかもしれない。
ただの観光地とも違う不思議な、商売っ気の少ない人々のすむ暑い国。
食べ物は脂っこく現地の人々も日本食が大好きなのだと口を揃えていうアジアの小国。
僕は底知れないその国の一端を動物をとおして覗き込んだだけなのかもしれない。
(後半へ続く)