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つゆ色のスカーフ 第2回

2015.05.24

清水美紅

清水美紅(しみず・みく)1984年生まれ。群馬県出身、東京都在住。自分の心の挿絵のような感覚で絵を描く。2017年9月に当店で二回目となる展示フェア「新しいかけらと秋の仕草」に向けた創作日記を連載中。 http://shimizumiku.com/

このお花はつゆ草。これは途中の時で、今はもう仕上がっています。
ヒゲのような部分の先端に、ゴールドを落とすのが楽しい。

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ある日、サニーさんからメールが来ました。2月のことです。「展示フェアやりませんか?」と。私はとても嬉しかったです。フェアってなんだろう、不思議!と思いつつもすぐ決めました。SUNNY BOY BOOKSが好きだから。思い出があるからです。

今年は絵描き10周年です。絵描きになろう、と思って、決めてから10年たったということです。10年記念のことは他に考えていて、その前にどこか小さな場所で、テーマか見た目を、しぼってやりたいなと、このふゆ部屋の整理をしながら、そんなことを薄く想像していました。本の整理をしていたその夜、サニーさんから先のようなメールを頂いたのでした。

思い出、というのはSUNNY BOY BOOKSがはじまった年に開催した色を綴じるとき、というイベントのことです。
私がライブで絵を描いて、タケオさんがそれを冊子にしていくというものでした。その日の私の印象は、手に色が戻って来た、というものでした。私はそれまで青い絵をかいていました(私は青いつもりはあまりなかったけど…。このことは文章にするのが難しいので詳しく書きません)。
青い絵に太陽の光!
私は満足していました。

でも、その後もサニーさんはお店のお知らせや年賀状に追記で、またなにかやりましょうと書いてくれました。そういう方はあまりいらっしゃらないのでこれはありがたいことだなぁと思っていました。何回目かの追記の時に、色を綴じるときの日が嵐だったので、少し心残りがあるというような言葉があって、ちょっとした一言だと思うのだけど、そうだったのかーと思いました。

せっかく好きな事を仕事にしているなら、お互いが満足いくほうがいいと思うので、今回のつゆ色のスカーフはサニーさんも満足するものになるといいなと思います。
今は、準備中だからそういうことはあまり気にしないで(気にする時間もないほどに忙しく)自分のいまできることを最大限に、やっているけれど、展示の最後の日はそうなるといいな。やっぱり日々は地続きなんだ。ブツブツ切れているわけではない。当たり前だけどね。

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私は去年一年間、ARTS&CRAFT静岡手創り市というイベント内の、小屋の企画展のアートディレクターをつとめたのですが、そこでこのお互いが満足ということが、すごく腑に落ちたのです。
長期であることと、イベントスタッフである企画者6人の、本業がありながら気持ちをたよりに動く生身の姿と、出来上がった時の嬉しそうな表情をみて感じたことでした。
私は今まで、相手にしてもらっているのだと思っていました。自分の絵を活かす為に、相手がやってくれているのだと。こう書くとひどいですね。でも勇気を持って言葉にすると、こうです。
でもそうではなくて、私が打ち込むほど、相手も打ち込んでいって、それをみて私もがんばろって思っていたのだった。今までずっと、10年ずっと、そうやってこれたんだと分かったのでした。

絵が大好きで描き続けているから、おかげで苦労が多いけれど、たまにこういう視界が開ける感じがあって、それを私のなかにある社会に還元したり大事に隠したり臆病になったり、バランスとっているのだろうな。
(2015/5/21)

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