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ファースト・センテンスを選んで

2019.07.18

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SUNNY BOY BOOKS 店主の日々雑記。

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ファースト・センテンスを選んで

7月28日(日)までサニーで開催している阿部海太「フロム・ファースト・センテンス2」では店主が選んだ本の冒頭だけを伝え、作家が言葉と向き合い生まれた絵が展示されています。

単行本サイズの新作はどれも絵の奥にそっと物語を隠しているかのような佇まい。
観る方もセンテンスに触れてより一層、作品を理解できるような展示となっています。

ではどのような基準でこの本を選んだかという話。
まずは作家である阿部さんに宛てて、彼がいままでにどんな本を読んできたか、どんな事に興味があるのかなど過去にしたたわいのない会話を思い出し、見えてきた本を選びました。

すると自然に海外文学、特に神話や物語ることについての本が増えました。
最初にまとめて10個のセンテンスを送ったのですが、冒頭は少し暗いものが多く(文学だからか)、「夜」「森」「海」など自然風景(*1)に寄った偏りがでてきてしまいました。
なので残りのものはなるべく登場人物の心情(*2)やシンプルにどう描くのか気になる描写(*3)のものなどバリエーションを持たせてみました。

 *1「冬だった。暖かさなどもうとうになくなったような裸電球の列が、小さな田舎の駅の、寒々とした吹きっさらしのプラットホームを照らし出していた。」
*2「えたいの知れない不吉な塊が私の心を終始圧(おさ)えつけていた。」
*3「こうして人々は生きるためにこの都会へ集まって来るのだが、僕にはそれがここで死ぬためのように考えられる。」

本として、これを選びたいという思いがあっても冒頭がとにかく長かったり、逆に完結すぎてイメージが広がらなそうなものは外していきました。
何よりも企画的に冒頭が一番の肝だったので、最終的には全体でバランスがとれるように調整したつもりです。

なかでも一番気に入っている冒頭は、

「それは奇跡のような素晴らしい夜だった。親愛なる読者よ、僕たちが若いときにのみあり得るような、そんな夜だった。」

というもので、この本全体の世界観と誰もがきっと体験する人生の輝かしい一瞬がこのセンテンスにぎゅっとつまっているように思えます。
阿部さんもアンサーとして冒頭の言葉のなかに漂う儚さをとらえた素晴らしい絵を描いてくれています。

IMG_5059

こんな風に選んだ本の冒頭から生まれた絵は全部で20点あります。合っている、合っていないはあまり考えず、言葉と絵を合わせてみたときに広がる風景を楽しんでもらえたら嬉しいです。
絵の中にあるのはきっと、本の著者が描いた世界だけじゃない物語。

\ 開催中 /
阿部 海太 個展 「フロム・ファースト・センテンス 2」
2019年7月13日(土)-7月28日(日)

*絵と冒頭、本のタイトルをまとめたリストを会場でお配りしています。

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