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新しいかけらと秋の仕草にむけて 第2回

2017.08.20

清水美紅

清水美紅(しみず・みく)1984年生まれ。群馬県出身、東京都在住。自分の心の挿絵のような感覚で絵を描く。2017年9月に当店で二回目となる展示フェア「新しいかけらと秋の仕草」に向けた創作日記を連載中。 http://shimizumiku.com/

この秋、SUNNY BOY BOOKSで個展をさせていただきます清水美紅です。
このコラムは毎回、サニーさん(SUNNY BOY BOOKS店主高橋さん)よりいただいた質問から始まります。

前回はこちらです。

第2回はどんな質問かな?

20170819_column

Q2:「美紅さん。お返事ありがとうございます。
ひとつの色にしても様々な種類があることは言われてみたらそうだなと思うけれど、キャンバスを通してそのことと向き合うのはたたかいですね。くるおしい思いをしてゆっくり着実に新しい色を手にしてきたのがわかってなんだか嬉しいです。今回のオレンジ色、そしてこれから美紅さんが出会っていく色をぼくも楽しみにしています。

今回たずねたいのは、「おんなのこ」のことです。
色とともに印象的なモチーフとして登場するおんなのこは美紅さんにとってどういう存在ですか?彼女たちを描くことで、描き続けてきたことでどんな世界をみているのか教えていただければと思います。」

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A2:「サニーさん、こんにちは。

新しい色、楽しみにしていただけたら嬉しいです。
本屋さんにあてはめたら色はなににあたるのかな。
本の種類?
展示やイベント?
そんな話も今度聞かせて下さいね。
私もSUNNY BOY BOOKSのこれからの色を楽しみにしています。

質問ありがとう。

「おんなのこ」について。

サニーさんが、なんで平仮名で表現したのか、興味深く感じました。
漢字に変換することができないくらいに、「おんなのこ」は「どういう存在か」、
特定できない、つかみどころが無いものだからなのでしょうか。

私も、よくわからないのです。
気付くと、描いている。
描いている時は夢中。
楽しい。
描きたくないと思う時もある。
このまま描き続けるのかなとふと疑問に思うこともある。

でも、やっぱり今日も、描かずにはいられない存在。

よくわからないなりに、この機会によく考えてみて分かったことは、
分かったというか、薄々分かってはいたけれど、改めて腑に落ちたことは、
絵の中の「おんなのこ」は、私。ということ。

だって、「おんなのこ」を描きたくない時もあるけれど、描かずにはいられない、ということは、
「おんな(おんなのこ)」である自分がいやになることもあるけれど、
生きないわけにはいかない、ということと同じだから。

思えば、絵の中の「おんなのこ」と私はずいぶん長く、向き合ってきました。
絵を描き始めてから十数年間、自分の名前以上に彼女たちの顔を描いただろうね。

彼女たちを描き続けてきたことで、見ている世界は、、、
世界というと大きすぎて見渡せないから、
描き続けたことでどんな変化があったか、ということで考えてみるね。

絵の中の彼女たち、前と比べて大人になっているように思います。
意識して描いていないのに、自分が年を重ねるにつれて顔とか変わっている気がする。
怖い話みたいだね、夏だね。(違うよー)

それが面白いし、ほっとする。
私大人になれているんだって。
同時に寂しくもある。
もう描けない顔なんだなって。

「おんなのこ」から多分、「おんな」になる期間だったこの十数年、
いやになることもあるけれど、
生きないわけにはいかないから、絵を描き続けていたら、
少しずつ自分を受け入れられるようになってきました。

私なんか、と口にすることが減って、少しずつ幸せと思える瞬間が増えて、
循環する絵と私だな、なんて思っています。

しみじみと、「お互い大人になった」という思い。
自分が作ったもののことを、子どもと表現する人がいるけれど、
私の場合は自分の分身で、描き始めたころからそう思っていたので、
考えてみれば当たり前なのかも。
お互い大人になったね。

そうそう、「おんなのこ」は私で、あなたでもある。と密かに思っている。

もし、絵を見る人が彼女たちに心を重ねることができたら、
それはあなた、でもあるなと思います。
絵の中にいる気持ちになったと感想で聞いたことがある。
強制したくないし、それぞれの見方でかまわないのだけど、
そういうふうに楽しんでもらえたら、嬉しいね。

彼女たちに心を重ねて、絵の中で風をうけたり、リンゴがそばにいたり。
どんな気持ちになったか、そういうお話を聞けるから個展がいつも楽しみです。

今日も、
画面の中に、おいていく。
例えば、
花びらの薄いぼわっとしたかたちに対して、細い雲。
右上の大きな色のかたまりと、人物のスカートの三角と、足の曲線でハーモニー。
首につぶつぶのネックレスを浮かせる。
人物の目を描く、いちばん緊張する瞬間。
目に色を入れる。
その目が、窓からさす光でひかる。

単に良いバランス、きれいなバランスではなく、自分の心に響く、かたちをつくっていく。
こんなふうな姿になれたらいいなと、少し祈る。

「新しいかけらと秋の仕草」では、いろんな形のかけらの絵を展示します。

その中にはもちろん、人物の絵があります。
この写真の彼女のように秋の仕草の数々です。
夏から秋。
風にすっとした涼しさを感じるころ、髪を結ばない日が増えたら、季節が変わった合図かな。

いろんな種類のかけらのなかには、小さなかけらもあります。
そこには人物を描かないことにチャレンジしています。

大きなかけらから落ちた小さなかけら、と思えば人物がいなくても描けそう。
やってみよう。
いつのまにか張ってしまった氷を割るように。

「おんなのこ」、これからも絵に居続けるのか、いなくなるのか、
わからないけれど、謎は謎のまま、
ふしぎいっぱい謎いっぱいで、お互いがんばりましょうと、今日も自分を生きています。」

清水美紅
※個展「新しいかけらと秋の仕草」は2017年9/16-9/28の開催です。
http://shimizumiku.com/
https://twitter.com/simizu_miku

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